沖縄タイムス 2006年11月1日(水) 朝刊 26面
より
米兵強盗致傷/共犯の男を書類送検
うるま市勝連の浜比嘉島で米国籍の男性(22)=沖縄市=が首を切りつけられ、財布などを奪われた事件で、うるま署は三十一日、強盗致傷の疑いで、米海兵隊キャンプ・シュワブ所属の三等軍曹マイケル・アビンジャー容疑者(30)を書類送検した。容疑を大筋で認めているという。同容疑者は米軍に身柄を拘束されており、日米地位
協定に基づき起訴後に日本側へ引き渡されるとみられる。
県警は米軍施設内で数回にわたりアビンジャー容疑者から事情を聴いており、容疑が固まったと判断した。身柄の引き渡しを要求しなかった点について「米軍に拘束されていることで逃亡や証拠隠滅の恐れがなく、逮捕する必要性がなかった」としている。
調べでは、アビンジャー容疑者は、同容疑でうるま署に逮捕された米海兵隊キャンプ瑞慶覧に住む軍人の夫で無職ダリアン・ダニエルズ容疑者(29)と共謀。十月二十五日午後十時ごろ、浜比嘉島の路上で、男性の首をナイフのようなもので切りつけ、現金百ドル入りの財布や携帯電話などを盗んだ疑い。男性は全治二週間の軽傷。二人は車に分乗し、男性と沖縄市内で待ち合わせ。男性はダニエルズ容疑者の車で浜比嘉島まで移動した。
[解説]
「逮捕せず」常態化
自己規制と識者は指摘
うるま市の強盗致傷事件で、県警は米軍が身柄を拘束している米兵容疑者を書類送検した。被害者の男性は米国籍であるが、米軍関係者ではなく、第一次裁判権は日本にある。男性は首を切りつけられ、財布などを奪われており、「凶悪犯罪」だ。
日米地位協定は米軍に身柄を拘束された米兵容疑者は起訴まで米側が身柄を確保すると規定。一九九五年の運用改善で殺人や強姦という「凶悪犯罪」は、米側が「好意的配慮を払う」ことで起訴前の身柄引き渡しが可能になった。
県警は九八年の女子高生ひき逃げ死亡事件や二○○一年の連続放火事件で、いずれも米軍に身柄を拘束された米兵容疑者の逮捕状を取った。しかし、米軍は逮捕の同意を拒否。日本政府は身柄引き渡しに必要な日米合同委員会の開催を米側に要求しなかった。
その後、○三年の強盗致傷事件、今年一月のタクシー強盗事件では、身柄の引き渡しを求めていない。「引き渡しを求めずに書類送検」という構図が常態化している。
県警は「米軍が身柄を拘束しているため、逮捕しなくてもスムーズに事件送致できる」と説明している。地位
協定に詳しい新垣勉弁護士は「過去の例を基準に日本側が自己規制している恐れがある。県警が逮捕状を取らないことは、捜査の在り方として問題がある」と指摘している。
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