介護保険制度の抜本的見直しを求める意見書

 日本共産党市会議員団は、介護保険制度の抜本的見直しを求める意見書を提案しておりますのでその理由を説明いたします。

 今年度、介護保険法に基づき制度の改定が行われました。ところがその中身は制度発足当時より指摘されていた制度そのものの欠陥が解決されないまま、特別 養護老人ホームなどの食費・居住費の全額自己負担の実施やホームヘルパーのサービス制限、ベッドや車イスのとりあげなど高齢者の自立を促すどころか阻害するとんでもない内容です。とりわけ介護ベッドの取り上げにいたっては、平成18年5月時点で要支援・要介護1のいわゆる軽度者4,020人が使用していたものが、7月には2,863人となり、京都市の見込みでは最終71人しか給付対象とならないとなっています。

 これに対し市民から「ベッドの取り上げはやめてほしい」と213件の請願が出されました。「ここまでして年寄りをいじめるのか。これでは早く寝たきりになれといわんばかりだ」の声があがるのも当然ではないでしょうか。また平成18年8月29日の大都市介護保険担当課長会議の要望書にも福祉用具の使用が想定される者であっても、貸与の対象外となってしまうとして、判定基準となる状態像が実態に即したものとなるよう検討検証すべきと求めています。このことからも今回の制度改定によるベッドの取り上げがいかに矛盾したものであるかがわかります。

 さらに措置制度の時代に特別養護老人ホームへの入所を申請していた方が96歳になった今も入所できないという実態があります。やっとの思いで入所できた施設から食費・居住費の自己負担に耐えられずやむなく退所した方が、30都府県で1,326人にも上っていることが、8月末の厚生労働省の調査でも明らかとなっています。

 介護保険料の大幅値上げに加え、高齢者にとってはこの間の政府による税制の改定で、あらたに課税世帯となり介護保険料に連動して負担が増えています。「保険料は値上がるばかりで必要なサービスは受けられない。あまりにもひどい」と市民から怒りの声があがっています。このような実態は、介護保険制度の理念である「介護の社会化」や「自立支援」に大きく逆行するもので許されません。誰しも加齢とともになんらかの障害を受容しなければならず、介護を必要とするのは当たり前のことではないでしょうか。

 私は、独り暮らしの80歳台のお年よりに「保険料を払うのが精一杯。静かに死んでいきたい」とつぶやかせている、こんな制度は見直さなければならないと思います。今回の介護保険制度の改定に対して、全国の自治体がベッドレンタル料の独自助成など独自施策を打ち出していますが、そうしなければ高齢者のいのちも守れないという危機感があるからです。

 日本共産党市会議員団は、今回の改定が高齢者へのいっそうの負担増に加え、介護保険制度発足当初の「介護の社会化」や本来の「介護予防」の理念にも反するものであることから、介護を必要とする人たちが費用負担の心配なく、安心して必要な介護が受けられるものとなるよう介護保険制度の見直しを求めるものです。高齢者の置かれている過酷な実態を直視し、同僚議員の皆さんの賛同を願いまして提案説明といたします。