☆  互いに支えあい安心して暮らせるまちづくりを

京都国領会・会報 「投稿」

いまもこの西陣に国領五一郎の思いは生き続けている
               京都市会議員
               京都国領会・幹事  くらた共子

 
未来は、必ず明るい
 わたしは、激動の時代を見つめ、国領五一郎が発した「‥未来は、必ず明るい‥」という言葉の重みをかみしめています。
 先日の総選挙の結果、自民・公明政権が国民のきびしい批判を受け、歴史的大敗を喫しました。日本共産党は真正面 から「自公政権を退場させよう」と訴えつづけました。それだけに有権者がくだした審判を、日本の政治にとっての大きな前向きの一歩として歓迎します。
 そして、「未来は明るい」という思いを確信に、新たなたたかいに立ち向かう決意がみなぎるのを感じています。
 みなさんとともに歴史を切り開いてきた日本共産党の新たな出番です。

いま西陣の底辺にある実態の深刻さ
 政治の行き詰まりは、弱者へのしわ寄せとなり生活を破たんさせ、自殺という最悪の事態を量 産しています。この現象を切り取れば国領五一郎がこの地で活動していた時代と何も変わらないではないかと思うわけです。現に、現在の西陣の職人が最低賃金制も守られないなかで泣き寝入りしている実態は依然として存在しています。長引く不況に、百年に一度と言われる金融不安、さらに新型インフルエンザなどという新しいファクターも加わり、西陣で働く労働者はもちろんあらゆる産業分野の労働者の労働条件は悪化の一途となっているのです。

 この間、わたしはある西陣の織物会社の手織り職人さんと会い全西陣織物労働者組合のみなさんと一緒に話を聞きました。「賃金が少なくて食べていけない」という訴えです。
 調べによると、最低賃金以下の工賃で働いており、商品の「きず引き」基準もはっきりしたものはありません。「不況で会社もたいへんなので‥」という理由で工賃が一方的に決められるような状況でした。この方については、全西陣織物労働者組合、北上地区労、労働センターと共に会社側との団体交渉のなかで、最低賃金に足りていなかった分の未払い賃金が支払われることになりました。
 しかし、「最低賃金制? そんなもん知らん」と言い放つような会社が存在し、そんな中で、じっと息をひそめるように耐えてはたらく労働者の姿は、まさに小林多喜二が描いた「蟹工船」と共通 のものがあります。

西陣のこれからはどうあるべきかを考える

 わたしは、今回のことを通じて、時代のひずみは繰り返し弱者に投影するということを感じると共に、それなりに経済が保たれているときには露呈しなかった根本的な問題を顕著化させるものだと思いました。
 西陣のものづくりの技は誇れるが、そのひと、産業を形づくるひとりひとりが幸せに生きているかという側面 では、決して誇れる状況にはないと思います。

 わたしは、西陣のこれからを考えるとき、誰が、何をつくるにしても、どんな方法でつくり売るにしても、地域産業としての基本ルールをつくることが必要になると考えます。なぜヨーロッパ諸国の伝統工芸品が、世界の信頼を得て愛されるのか、安定的に後継者を育成し、高い技術継承ができているのか、伝統工芸を守りながら、新産業の創出に発展させることができるのか、産業を守る制度があるからです。経済の浮き沈みがあっても、原材料の調達やものづくりの技が途絶えることのない仕組みが必要なのです。わたしたちにもできるはずです。
 また、「西陣・町ミュージアム構想」などの取り組みにあるように、地域特性に着眼した地域全体のまちづくりを住民が主体となってすすめていることは重要です。西陣界隈の町屋で営業する若い女性は、「西陣らしい町なみを残し、安心してくらしたい。よいまちにしたいです。」と将来を展望しています。

互いに支えあい安心して暮らせるまちづくりを
 わたしは、日々西陣を歩くなかで、「自分だけが、儲かったらええ」という考えとは対極の、このまちに住む人、働く人が互いに支えあい安心して暮らせるまちづくりへの願い、力を合わせていこうとする新しい空気が西陣に生まれていることを感じています。
 混沌とした社会情勢のなかで、行き詰まった政治を変えたいという国民の願いは一層熱を帯びて激しくなるでしょう。国領五一郎が指示(さししめ)した未来への扉を押しあけるその瞬間にわたしたちは遭遇しているのだと思います。

 わたしは、この文章を書き上げたのは7月15日の党創立87周年記念日でした。そのときあらためて国領五一郎の思いを受け継ぐひとりとして政治の刷新にがんばりたいと決意し、総選挙の勝利に向けて全力投球・奮闘しました。

 総選挙後、前文を加筆しました。
 総選挙のなか、西陣をとりまく政治情勢も大きく変わりはじめました。
「たたかってこそ‥国領五一郎の思いは、この西陣にいまも生きている‥」といっそう確信と希望をいだいています。